空き家の相続税評価額はどう計算する?土地・建物と評価減の条件

空き家の相続税評価額を土地・建物と評価減の条件に分けて確認する図

空き家の相続税評価額は、建物と土地を別々に計算して合計します。空き家であるだけで評価額が自動的に下がるわけではありません。

最初に用意したいのは、固定資産税の課税明細書、登記事項証明書、相続があった年の路線価図または評価倍率表です。あわせて、相続開始時に住居・賃貸・空室のどれだったかを確認します。

建物と単純な土地評価は自分でも概算できます。一方、二つ以上の道路に面する土地、不整形地、小規模宅地等の特例、賃貸中の物件は個別判定が必要です。申告額を確定する前に税理士へ確認する範囲を分けておきましょう。

空き家の相続税評価額は土地と建物を分けて計算する

相続税を計算するときの不動産価額は、一般の売却価格や不動産会社の査定額とは異なります。まず建物と土地の相続税評価額を求め、ほかの財産と合わせて申告要否を判断します。

次の二つは、手元の公的資料から自分でも確認できます。

  • 課税明細書で土地・建物の固定資産税評価額を分ける
  • 路線価図で前面道路に路線価があるかを調べる

建物は固定資産税評価額×1.0が基本

自用の建物は、原則として次の式で評価します。人が住んでいるか空き家かによって、この基本倍率が変わるわけではありません。

建物の相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 1.0

固定資産税評価額は、毎年届く固定資産税の課税明細書で確認できます。書類が見当たらないときは、物件所在地の市区町村で固定資産評価証明書の取得方法を確認してください。

土地は路線価方式か倍率方式で概算

土地は、国税庁の路線価図で前面道路に路線価が付いているかを調べます。路線価がある地域は路線価方式、ない地域は原則として倍率方式です。

方式基本の計算確認する資料
路線価方式路線価×補正等×地積路線価図・登記事項証明書
倍率方式固定資産税評価額×倍率課税明細書・評価倍率表

路線価は1㎡当たりの価額を千円単位で示します。たとえば「200」なら1㎡当たり20万円です。100㎡の土地を補正率1.0で単純計算すると、2,000万円が概算になります。

実際には奥行、間口、土地の形、接する道路の数などで補正や加算が入る場合があります。路線価×地積は、条件を確認する前の概算と考えてください。

土地2,000万円・建物500万円なら合計2,500万円が出発点

土地の概算が2,000万円、建物の固定資産税評価額が500万円なら、不動産の評価額は合計2,500万円です。この金額に税率を直接掛けて相続税額を出すわけではありません。

預貯金、有価証券、ほかの不動産などを加え、債務や葬式費用などを差し引いて課税価格を計算します。小規模宅地等の特例が使える場合は、対象となる土地部分の評価を調整します。

空き家の建物評価と土地評価を確認し、補正後に合算する4段階の流れ
空き家の相続税評価額は、建物と土地を別に確認してから合算します。

評価減は「空き家」という名前ではなく土地条件と利用状況で決まる

評価額が下がる可能性はありますが、理由は「空き家だから」ではありません。土地の形や接道による補正、相続開始直前の居住・賃貸状況、取得者の条件を分けて確認します。

相続開始時の状態評価の出発点確認する制度・条件
単なる空き家自用の土地・建物土地の個別補正
被相続人の元自宅自用の土地・建物小規模宅地等の特例
第三者へ賃貸中貸家・貸家建付地の候補契約と賃貸割合
相続開始時の利用状況を単なる空き家・元自宅・賃貸中に分けて個別確認する判断図
評価減の候補は、相続開始時の利用状況と取得者の条件で分かれます。

不整形・間口・奥行など土地条件で補正される場合

路線価方式では、奥行が標準から外れる土地、不整形地、間口が狭い土地などに補正率が使われる場合があります。私道負担や無道路地、容積率の制限も個別検討の対象です。

ただし、角地や二方路線地は側方・二方路線の影響額が加算されることもあります。「形が特殊なら必ず下がる」とは限りません。地積測量図や公図も用意し、評価明細書で確認します。

相続時に賃貸中なら貸家建付地、単なる空室なら原則自用地

所有者が建てた家屋を第三者へ貸している場合、その敷地は貸家建付地として評価される可能性があります。土地の基本式は次のとおりです。

貸家建付地の価額 = 自用地価額 − 自用地価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合

一方、以前は貸家でも、独立家屋が相続開始時に現実に貸し付けられていなければ、原則として敷地は自用地価額で評価します。相続後に貸す予定があるだけでは、相続時点の評価減になりません。

集合住宅の一時的な空室は、従前の賃貸状況、空室期間、募集状況などで扱いが分かれます。賃貸借契約書、入退去日、募集記録、各戸の床面積が分かる資料をそろえて確認してください。

小規模宅地等の特例は元自宅か・誰が取得するかで確認する

小規模宅地等の特例は、一定の宅地について相続税評価額を減額する制度です。空き家に関係しやすい主な区分は、特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等です。

主な区分限度面積減額割合
特定居住用宅地等330㎡80%
貸付事業用宅地等200㎡50%

80%減額は、要件を満たす土地のうち限度面積までの評価額を減らす意味です。建物評価や相続税額が一律80%下がる制度ではありません。

特定居住用宅地等は330㎡まで80%減額

対象候補は、相続開始直前に被相続人などが居住していた宅地です。長期間使っていない別荘や、生活の拠点ではなかった空き家は、元自宅というだけで対象になるわけではありません。

誰が土地を取得するかでも条件が変わります。配偶者、同居親族、それ以外の親族では要件が異なるため、住民票だけで決めず、実際の生活状況と所有関係を確認します。

老人ホーム入所後の元自宅も条件次第で候補

被相続人が要介護・要支援認定を受けて一定の施設へ入所し、元自宅が空いていた場合でも、特定居住用宅地等の候補になることがあります。

ただし、入所後に元自宅を新たに第三者へ貸した、別の人の住居にしたなどの事情があると扱いが変わります。認定通知、施設の入所契約書、入所後の建物利用を確認できる資料を残しておきましょう。

取得者と申告期限までの保有・居住要件を確認

同居親族が取得する場合は、相続開始直前から申告期限までの居住継続と、土地の保有継続が主な確認点です。同居していない親族には、いわゆる「家なき子」の複数要件があります。

「親の自宅だった」「相続人が持ち家を持っていない」という一条件だけでは判定できません。相続人の居住歴や親族・法人の所有家屋まで確認が必要になる場合があります。

相続税の申告要否は空き家以外の財産も合算して判断する

空き家の評価額が分かっても、それだけでは相続税の有無は決まりません。まず、空き家以外の財産も含めた合計が基礎控除額を超えるかを確認します。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人が2人なら基礎控除額は4,200万円です。空き家、預貯金、有価証券、生命保険金の課税対象部分などを整理し、債務や葬式費用などを反映して申告要否を確認します。

相続税の申告期限は、通常、相続開始を知った日の翌日から10か月です。小規模宅地等の特例を使って課税価格を下げる場合は、申告書と必要書類の提出が必要になるため、基礎控除付近では早めに確認します。

なお、相続した空き家を売ったときの「空き家特例」は、売却時の譲渡所得に関する制度です。相続税評価額を直接下げる制度ではないため、相続税の特例と分けて考えてください。

課税明細書と利用状況を整理してから評価方法を確認する

自分で出した金額は、申告が必要そうか、税理士に確認すべき条件があるかを探るための概算です。まず課税明細書を手元に置くところから始めましょう。

  1. 固定資産税の課税明細書で土地・建物の評価額を分ける
  2. 登記事項証明書と路線価図・評価倍率表で土地の方式を確認する
  3. 相続開始時の居住・空室・賃貸状況を契約書や入所資料で整理する
  4. ほかの財産・債務・法定相続人と10か月の期限を一覧にする

土地が一つの道路に面した整形地で、特例や賃貸関係がなければ概算は比較的進めやすいでしょう。複数路線、不整形、私道、無道路、賃貸、小規模宅地等が関わる場合は、資料を持って相続税に詳しい税理士へ確認します。

相談時は「空き家があります」だけでなく、物件所在地、地積、固定資産税評価額、相続開始時の使われ方、取得予定者を伝えると整理が進みます。概算と個別判定を分け、申告期限から逆算して確認を始めてください。