空き家をタダで貸す契約書の注意点|使用貸借で決める5項目

空き家をタダで貸す前に確認したい契約注意のサムネイル

親族や知人から「空き家を使わせてほしい」と頼まれたら、タダなら問題ないと思いやすいです。けれど、無償で貸す場合も、まずは使用貸借契約として書面に残すことが大切です。

最初に確認するのは、無償であること、いつ返してもらうか、修繕費を誰が負担するか、又貸しを認めるか、保険と管理をどうするかです。ここが曖昧なまま鍵を渡すと、退去や費用で揉めやすくなります。

所有者が複数いる、相続予定がある、借主が改修や事業利用を希望している、建物の老朽化が進んでいる場合は、契約前に弁護士・司法書士・不動産会社・保険会社へ確認する範囲です。口約束のまま鍵を渡さないことを出発点にしましょう。

先に決める3点
  • 無償で貸すのか、実費や謝礼を受け取るのかを分ける
  • 使用目的、期間、返還時期を契約書に書く
  • 修繕、保険、近隣対応の担当を決める

空き家をタダで貸す前に最初に確認すること

契約書を作る前に、次の5項目を順番に確認します。書き始める前に合意できない項目があるなら、まだ鍵を渡す段階ではありません。

  1. 無償で貸す範囲と、受け取る金銭の有無を確認する
  2. 契約期間、返還時期、中途解約の条件を決める
  3. 日常費用、大きな修繕、退去時の片付けを分ける
  4. 本人以外の使用、同居人、又貸し、事業利用を決める
  5. 火災保険、点検、近隣からの連絡先を確認する
空き家を無償で貸す前に確認する契約書項目のチェックフロー

特に金銭のやり取りがある場合は注意が必要です。実費精算、固定資産税相当額、謝礼の名目でも、実質的な対価と見られるかは契約内容で変わります。

税務や契約類型に迷うときは、先に専門家へ確認します。無償貸与のつもりで始めたのに、後から賃貸借や贈与の問題として争われると、当事者だけで整理しにくくなります。

ルール1|使用貸借契約として書面に残す

空き家の無償貸与は、法律上「使用貸借契約」として扱われます。これは、無償で使わせ、契約が終わったときに返してもらう契約です。

「親族だから」「知人だから」と口頭だけで始めると、後から契約内容を確認できません。契約書には、貸主、借主、物件、使用目的、無償であること、返還時の扱いを最低限書きます。

電気代や水道代のような実費は、誰が契約して誰が払うのかを分けておくと安全です。固定資産税相当額や謝礼を受け取る場合は、無償性が崩れないか個別に確認しましょう。

ルール2|期間・返還時期・終了条件を決める

使用貸借で揉めやすいのは「いつ返すのか」です。期間を決めれば満了時、目的を決めれば目的を終えた時点が返還判断の軸になります。

期間も目的も曖昧だと、貸主と借主で返還時期の認識がずれます。親族や知人間でも、後々の証拠となるよう必ず書面を作成しましょう。

項目契約書の例曖昧な場合
期間2026年7月から2年間返還時期で争いやすい
目的借主本人の居住用事業利用や長期占有に広がる
中途解約3か月前に書面通知急な退去要求でもめる
終了事由転居、目的達成、違反契約解除の根拠が弱い

借主が亡くなった場合や、貸主側で相続が起きる場合も想定しておきます。所有者が複数になる可能性があるなら、相続人や共有者の同意をどう扱うかも確認が必要です。

ルール3|修繕費・原状回復・荷物の扱いを分ける

無償で貸す場合、費用負担は「賃貸住宅ならこう」と単純に決められません。使用貸借では、借主が通常の必要費を負担する考え方があります。

一方で、屋根、外壁、給排水設備などの大きな修繕は金額が大きくなりがちです。貸す前に建物の状態を写真で残し、どの修繕を貸主・借主のどちらが判断するか決めます。

費用で分ける項目

  • 電球交換、軽い清掃、日常の消耗品
  • 屋根・外壁・給排水など高額になりやすい修繕
  • 借主の故意・過失による破損
  • 退去時の荷物、造作、残置物の撤去

借主が取り付けた棚、設備、造作を退去時にどうするかも書いておきます。外せない設備や過分な撤去費用が出るものは、取り付け前の承諾制にしておくと安心です。

ルール4|使用目的・同居人・又貸しを禁止条件にする

「本人が住む」と聞いて貸したのに、第三者に住まわせたり、事業や民泊のように使われたりすると、建物管理や近隣対応が大きく変わります。

使用貸借では、契約や目的物の性質に従った使用が前提です。貸主の承諾なく第三者に使わせることはできないため、契約書にも具体的に落とし込みます。

  • 使用目的は「借主本人の居住用」など具体的に書く
  • 同居人を追加する場合は事前承諾制にする
  • 又貸し、転貸、第三者使用を禁止する
  • 店舗、事務所、倉庫、民泊などへの用途変更を禁止する

違反した場合は契約解除できる旨も明記しておくと、抑止力になります。家族の一時滞在まで禁止したいのか、長期同居だけ承諾制にするのかも、先に話し合っておきましょう。

ルール5|所有者責任・保険・近隣管理を残さない

空き家をタダで貸しても、所有者としての管理判断がなくなるわけではありません。建物や塀、庭木の状態が悪く、近隣に被害が出れば責任問題になることがあります。

空家等対策の制度でも、所有者や管理者には適切な管理が求められます。借主が住む予定でも、老朽化した屋根・外壁・塀・庭木を放置してよい理由にはなりません。

  • NG:火災保険の対象や使用状況を確認しないまま貸す
  • NG:屋根、外壁、塀、庭木の危険を見ないまま鍵を渡す
  • NG:近隣からの連絡先を借主だけに任せきる
  • NG:改修や残置物処分を口頭承諾だけで進める

火災保険は、空き家状態や居住予定の有無で扱いが変わることがあります。貸す前に、保険会社へ「誰が住むのか」「空き家期間があるのか」「用途は居住か」を伝えて確認します。

親族・知人に貸すときの契約書チェックリスト

親族や知人に貸すときほど、遠慮して細かい話を後回しにしがちです。契約書を作る前に、次の情報を紙やメモにまとめておきます。

契約前に確認すること

  • 登記名義、共有者、相続予定の有無
  • 借主本人、同居予定者、使用目的
  • 契約期間、返還予定日、中途解約の方法
  • 電気・水道・ガス・固定資産税相当額などの負担
  • 修繕、改修、残置物、原状回復の扱い
  • 火災保険、点検頻度、近隣からの連絡先

共有者や相続人の同意が必要な場合は司法書士や弁護士、賃貸化も検討する場合は不動産会社、税務の扱いが気になる場合は税理士が確認先になります。保険は契約している保険会社へ直接確認しましょう。

空き家を無償で貸す判断で迷ったら契約前に整理する

空き家をタダで貸すこと自体が悪いわけではありません。人が使うことで換気や防犯の面で管理しやすくなる場合もあります。

ただし、無償だからこそ、条件が曖昧なまま長期化しやすい点に注意が必要です。使用貸借契約として、無償性、期間、費用、用途、保険管理を書面に残してから進めましょう。

名義、相続、建物状態、賃貸化の判断で迷う場合は、相談先を先に分けると手戻りを減らせます。空き家全体の相談先を整理したい場合は、次の記事も確認しておくと判断しやすくなります。