遺言書があっても空き家で揉める理由|遺留分と不動産が絡む相続トラブルの注意点

遺言書を残しておけば、相続で揉めることはない。そう思っている方は多いのではないでしょうか。

ところが実際には、遺言書があってもトラブルになるケースがあります。特に空き家や実家などの不動産が絡む場合、遺言書の内容が思い通りに進まないことがあります。

なぜそうなるのか。遺留分と不動産が絡む相続トラブルの構造を整理していきます。

遺言書があっても遺留分の請求は止められない

相続人には「遺留分」という権利がある

遺言書は、亡くなった方の最終的な意思を示す大切な書類です。しかし、内容によっては「遺留分」という権利が関係し、希望どおりに進まないことがあります。

遺留分とは、法律が保障する相続人の最低限の取り分です。

たとえば「全財産を長男に」と遺言書に書いてあっても、他の相続人(次男・長女など)は自分の遺留分に相当する金額を請求できます。これを遺留分侵害額請求といいます。

現在の制度では、遺留分を侵害された場合は金銭での請求が中心になります。遺言で財産を多く受け取る人は、現金での対応を求められる可能性があります。

遺言書を作れば安心、という単純な話ではありません。

不動産が絡むと揉めやすい、その構造

「1人に相続させれば解決」が通じない理由

現金や預金であれば、遺留分に相当する額を分けることは比較的スムーズです。しかし不動産は現物を切り分けることができません。

遺産の大きな割合を実家が占める場合、家を相続する人が他のきょうだいに代償金を支払う「代償分割」という方法も考えられます。ただし、支払うための現金がなければ、話し合いが難しくなります。

不動産が財産の大半を占め、手元資金が少ない状況では、遺留分をめぐる話し合いが難しくなりやすいです。

空き家の評価額のズレが、交渉を難しくする

遺留分の計算には、不動産の評価額が直接影響します。遺言書を書いた時点と、相続が発生した時点では、不動産の市場価格が変わっていることがあります。

また、空き家の評価は建物の状態、土地、利用状況などで見方が分かれることがあります。「空き家だから価値は低いはず」と決めつけず、評価方法を確認しながら進めることが大切です。

評価額をめぐって相続人間の意見が割れ、そこから話し合いが長引くこともあります。

遺言書の内容が実行されない2つのパターン

トラブルの構造を整理すると、大きく2つに分けられます。

パターン主な原因起きやすい結果
遺留分割合の確認不足他の相続人の遺留分を考慮しない遺言内容遺留分侵害額請求が届き、代償金の支払いを求められることがある
不動産評価のズレ相続発生時の評価額が想定と異なる遺留分の計算結果が変わり、金額交渉が難航する

どちらも「遺言書を作った時点では問題なかった」のに、いざ相続になってから表面化するパターンです。

共有で相続した空き家が負担になりやすい理由

遺言書の内容が曖昧だった場合などに多いのが、複数の相続人で空き家を共有してしまうケースです。

共有名義の不動産を売却・賃貸・解体する場合、多くの判断で共有者の同意が必要になります。反対する人がいると進めにくくなり、固定資産税などの負担だけが残ることがあります。

固定資産税の負担割合や、誰かが使い続けているといった問題が重なると、感情的な対立に発展しやすくなります。長期化すれば費用や手間も増え、負担ばかりが残ることもあります。

生前にできる2つの対策

遺言書を書くだけでは不十分です。遺留分と空き家問題を同時に見据えた準備が必要になります。

  • 付言事項で気持ちを伝える 遺言書に「なぜこの分け方にしたか」を添える付言事項は、分け方そのものを変えるものではありませんが、相続人の感情的な反発を和らげる材料になります。
  • 生命保険で代償資金を準備する 不動産を相続する人に代償金の支払いが想定される場合、生命保険などで現金を準備する方法も検討できます。保険の扱いは契約内容や相続関係によって異なるため、事前に専門家や保険会社へ確認しておくと安心です。

また、相続した空き家を売却する場合、税制上の特例を使える可能性があります。期限や要件は制度や個別事情によって異なるため、放置せず早めに方針を決め、必要に応じて税理士などに確認しましょう。

まとめ:遺言書は出発点、遺留分と不動産評価まで見越した準備が必要

遺言書があっても、遺留分が絡めば内容どおりに進まないことがあります。

特に空き家や実家など不動産が主な財産の場合は、代償金の工面や評価額のズレが揉める原因になりやすい構造があります。

遺言書の作成は、相続対策のゴールではなく出発点です。遺留分の計算・不動産の評価・代償資金の手当てまで含めて考えることが、相続トラブルを減らすうえで大切です。

不安な点があれば、弁護士や税理士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。