土地と建物の名義が違っていても、その状態だけで直ちに違法になったり、必ず立ち退きになったりするわけではありません。重要なのは、誰が土地を使う権利を持ち、どの契約や経緯に基づくのかです。
最初に、土地と建物それぞれの登記を取り、契約書や地代の支払記録、相続資料と照らし合わせます。売却や解体、名義変更の話を先に進めると、必要な同意や税負担を見落とすおそれがあります。
立ち退きの通知が届いた、名義人が亡くなっている、相続人同士で意見が割れている場合は、自分だけで判断しないことが大切です。資料をそろえ、司法書士や弁護士など状況に合う相手へ早めに確認しましょう。
土地と建物の名義が違う空き家でまず確認したい4点
名義の違いを見つけたら、解決方法を決める前に次の4点を確認します。登記だけでは契約内容や相続人全員まで分からないため、資料を組み合わせて見ることが重要です。
- 土地と建物の登記:所有者、取得原因、共有持分、抵当権などを別々に確認する
- 契約と支払記録:借地契約書、使用貸借の覚書、地代の通帳記録や領収書を探す
- 相続関係:名義人の生存、戸籍、遺言書、遺産分割協議書、相続人の範囲を確認する
- 通知と管理状態:地主・相続人・自治体からの文書、建物の劣化や近隣への影響を確認する
土地・建物の登記事項証明書は、オンライン、郵送、登記所の窓口で請求できます。所在地の表示が曖昧な場合は、固定資産税の納税通知書や権利証なども手掛かりになります。
一方、登記には「無償で使わせる約束だったか」「地代を払っていたか」までは通常記録されません。登記と契約・支払記録を並べて確認することで、次に尋ねる相手が見えやすくなります。

土地と建物の名義が違う3つの代表パターン
名義が違う理由は一つではありません。空き家では、親族間の使用貸借、地主との借地、相続登記未了の3パターンを起点にすると、必要な資料を整理しやすくなります。
親族の土地を無償で使っている(使用貸借)
親名義の土地に子が家を建て、地代を払わず使ってきた場合は、使用貸借が問題になります。書面がなくても、家を建てた経緯、負担してきた費用、当事者間の合意を確認する必要があります。
問題が表面化しやすいのは、親が亡くなった後です。土地が複数の相続人による共有になると、建物を持つ人が当然に土地を単独取得できるとは限りません。
建物が自分名義でも、土地を使う権利は土地所有者との契約関係に左右されます。相続人から返還を求められたときは、口約束だけで結論を出さず、経緯と資料を弁護士へ示して確認します。
地主の土地を借りている(借地権)
土地を地主から借りて家を建てている場合、土地は地主名義・建物は借地人名義という構造です。これが「借地権」のある空き家です。
借地権には普通借地、定期借地、旧法借地などがあり、更新や契約終了時の扱いは同じではありません。契約書で種類、契約期間、更新、地代、建物の処理を確認します。
古い契約書が見つからない場合は、地代の振込履歴や領収書、更新時の書面、地主との連絡記録を集めます。契約の有無や内容を自己判断で決めず、売却や解体の前に確認しましょう。
相続後も旧名義のまま(相続登記未了)
土地か建物、または両方が亡くなった人の名義で残っているケースです。相続が重なるほど関係者が増え、遺産分割や売却の合意に時間がかかりやすくなります。
相続登記は2024年4月1日から申請が義務化されました。相続で不動産を取得したと知った日から3年以内が基本で、2024年4月1日より前に知った未登記不動産は、2027年3月31日までの申請が必要です。
誰がどの不動産を取得したか、遺産分割が終わっているかで必要な登記は変わります。期限の起算点や相続人の範囲に迷う場合は、戸籍と遺産分割資料を持って法務局や司法書士へ確認してください。
3パターンの違いを、最初に見る資料と合わせて整理すると次のとおりです。
| パターン | 土地名義 | 建物名義 | 先に見る資料 |
|---|---|---|---|
| 使用貸借 | 親・親族 | 子など | 経緯・費用記録 |
| 借地権 | 地主 | 借地人 | 契約書・地代 |
| 相続未登記 | 故人・共有 | 故人・相続人 | 戸籍・遺産分割 |
表で近いケースを見つけたら、契約書や支払記録も確認することが次の一歩です。親族間でも地代を払っている場合があり、第三者との契約でも使い方や契約時期は異なるため、表だけで法的な結論を出さないでください。
名義が違う空き家で起きやすい3つのトラブル
土地の返還や立ち退きをめぐって対立する
土地所有者が売却や活用を希望し、建物所有者へ土地の返還や明け渡しを求めることがあります。ただし、応じる必要があるかは、契約の種類、期間、目的、これまでの経緯で変わります。
通知を受けたら、回答期限と求められている内容を確認し、封筒を含めて保管します。次のような行動は避け、契約資料と連絡記録をそろえて弁護士へ相談しましょう。
- 内容を確認せず、口頭だけで退去や解体に同意する
- 地主と話し合わないまま、地代の支払いを自己判断で止める
- 相手方の権利を確認せず、建物の処分や土地利用を進める
通知への返答が必要でも、分からない点を認めたうえで「資料を確認して回答する」と伝える方法があります。期限が短い、訴状が届いた、交渉が決裂している場合は、早めの法律相談が必要です。
関係者の合意がとれず売却・解体が進まない
土地と建物の名義人が別々のとき、売却・解体を進めるには関係者の合意や権利関係の整理が必要になることがあります。名義が違うまま同時売却できる場合もありますが、契約当事者と条件の調整が必要です。
相続で土地が共有になっていると、建物所有者と土地共有者の希望が一致しないこともあります。先に不動産会社や解体業者へ依頼するのではなく、誰の同意が必要かを確認します。
土地か建物を売買・贈与して名義を統一する方法もあります。ただし、代金、贈与税、不動産取得税、登録免許税などの検討が必要になるため、手続前に税理士や司法書士へ確認します。
管理が止まり行政対応や税負担の問題が重なる
権利関係の話し合いが長引いても、建物の劣化は止まりません。草木、雨漏り、外壁材の落下、害虫、不法侵入などを定期的に確認し、近隣へ影響する箇所は安全な方法で対応します。
市区町村から管理不全空家等または特定空家等として指導を受け、改善せず勧告を受けると、敷地が住宅用地特例の対象外になることがあります。名義整理と空き家管理は並行して進めることが大切です。
行政代執行は、指導や勧告、命令などを経た先の措置です。「自治体が無償で解体してくれる」と考えず、通知が届いたら担当課へ連絡し、求められている改善内容を確認してください。
名義の違いを整理する4ステップ
解消方法を先に一つへ決めず、確認と合意を順番に進めます。登記、契約、相続関係を整理してから、保有・売却・解体などの方針を比べる流れです。
土地と建物それぞれの登記事項証明書を取得し、所有者、共有持分、取得原因、抵当権などを確認します。
借地契約、地代記録、固定資産税通知、戸籍、遺言書、遺産分割協議書、当事者との連絡記録を集めます。
家族、相続人、地主などと、保有継続、契約整理、同時売却、名義統一、解体・返還の希望を確認します。
登記、契約交渉、税負担を確認し、合意内容は書面にします。必要な登記と契約を終えてから処分を進めます。
権利関係が確認できたら、家族・相続人・地主など関係者と話し合い、今後の方針を決めます。口頭合意だけにせず、対象の土地・建物、費用負担、期限、売却や解体の条件を書面で確認します。
- 現在の契約を続けて空き家を管理・活用する
- 土地か建物を売買・贈与し、名義を統一する
- 土地と建物の所有者が協力し、同じ買主へ売却する
- 契約を合意で終了し、建物を解体して土地を返す
名義統一が税務・相続の面で適切かどうかは個別の事情によるため、すべてのケースで同じ答えになるわけではありません。名義変更を申請する前に、税金と契約への影響を確認することが大切です。

状況別に選ぶ相談先と準備する資料
相談先は「空き家だから不動産会社」と決めず、止まっている手続に合わせて選びます。初回相談では、土地・建物の登記、契約書、相続資料、通知書、これまでの経緯を時系列にしたメモが役立ちます。
登記申請や相続人整理は司法書士
相続登記、所有権移転登記、建物滅失登記など、必要な登記と申請書類を確認したい場合は司法書士が主な相談先です。名義人が死亡している場合は、戸籍や遺産分割協議書も持参します。
相続人が多い、古い相続が重なっている、どの不動産が故人名義か分からない場合は、その状況を最初に伝えましょう。調査範囲や必要書類を確認し、費用の見積もりも取ります。
争い・交渉は弁護士、税負担は税理士
立ち退き通知が届いた、地主や相続人と対立している、契約の有無が争われている場合は弁護士へ相談します。通知書、契約書、支払記録、メールや手紙を時系列に並べて持参します。
売買・贈与による名義統一や相続方法ごとの税負担は、税理士へ確認します。不動産の評価資料と検討中の方法を示し、手続後ではなく実行前に税額の考え方を聞くことが大切です。
行政通知は自治体、窓口不明なら法テラス
空き家の管理状態について市区町村から通知が届いた場合は、通知に記載された担当課へ連絡します。現地確認の結果、改善を求める箇所、期限、利用できる相談制度を確認してください。
法律問題か分からない、どの専門家を選ぶか決められない場合は、法テラスで法制度や相談窓口の案内を受けられます。案内担当者が弁護士・司法書士本人とは限らないため、個別判断は紹介先で相談します。
まとめ|登記と契約を並べて確認し、名義整理の一歩を決める
土地と建物の名義が違う空き家は、使用貸借、借地権、相続登記未了など、違いが生じた理由によって確認すべき資料と対応が変わります。名義の違いだけで、立ち退きや売却の可否を決めることはできません。
まず、土地・建物の登記、契約・支払記録、相続関係、行政通知と管理状態を確認します。そのうえで関係者と方針を話し合い、登記は司法書士、争いは弁護士、税金は税理士へ確認しましょう。
立ち退き通知や相続登記の期限がある場合は、資料がすべてそろうのを待たず相談を始めることも大切です。確認できた事実と未確認の点を分けて伝えると、必要な手続を整理しやすくなります。

