一般的には、自分が所有する空き家を個人同士で売買することは可能です。ただし、不動産会社が間に入らない分、物件調査、条件整理、契約書、決済、登記の日程を当事者が管理します。
最初に確認するのは、名義・権利、境界、建物状態、価格根拠、買主の資金、引渡し条件です。一つでも曖昧なら、署名や手付金の授受を先に進めないことが大切です。
すべてを自力で行う必要もありません。登記は司法書士、境界や未登記部分は土地家屋調査士、税務は税理士というように、必要な業務だけ専門家へ頼む方法もあります。
個人間売買を始める前に確認する6項目
買い手が親族や知人に決まっていても、契約書を作り始める前に物件と取引条件を確認します。確認の順番をそろえると、誰に相談すべきかも見えやすくなります。
- 名義・権利:登記事項証明書で所有者、共有者、抵当権、差押え等を確認する
- 境界・面積:公図、地積測量図、境界標の有無と現地の状況を照合する
- 建物状態:雨漏り、シロアリ、給排水、増改築、未登記部分、残置物を整理する
- 価格根拠:近隣の取引価格、成約情報、物件条件を比較し、決めた根拠を残す
- 買主の資金:自己資金か融資か、金融機関が求める資料と審査時期を確認する
- 引渡し条件:代金、手付、期限、鍵、残置物、税・費用の負担方法を話し合う
相続後の名義変更が未了、共有者の合意が未確認、境界標が見つからない場合は、売買条件の話し合いより先に整理します。建物と土地の名義が違う場合も、誰が何を売るのかを確定させます。
価格は、固定資産税評価額や路線価だけで決めるものではありません。国土交通省の価格情報、近隣の類似物件、不動産会社の査定等を比べ、物件状態の差も含めて記録します。

空き家を個人間売買する流れ6段階
個人間売買では、買い手が決まっていても、条件整理から引渡し後の書類保管まで段階があります。契約日だけでなく、融資、決済、登記申請を一つの日程表で管理します。
売買価格、支払方法、引渡し時期、残置物、修繕の扱いをメモにします。口頭で合意した内容も、後で契約書へ反映できる形に残します。
登記事項証明書と現地を照合し、共有、抵当権、境界、未登記部分を確認します。不具合や残置物は写真と一覧で買主にも共有します。
売主は価格の比較資料を残し、買主は自己資金や融資の見通しを確認します。融資を使うなら、契約前に金融機関へ必要書類と条件を聞きます。
物件、金額、支払い、引渡し、解除、融資、契約不適合責任等を具体的に記載します。雛形をそのまま使わず、物件状態と合っているか確認します。
残代金の入金確認、所有権移転登記の申請、鍵や関係書類の引渡しを同じ日程で調整します。司法書士と必要書類・本人確認の時期を早めに決めます。
契約書、領収記録、物件状況資料、登記関係書類を双方で保管します。売主の譲渡所得や買主側の税について、申告の要否と期限を確認します。

代金だけ先に渡す、鍵だけ先に受け取るなど、金銭・登記・引渡しをばらばらに進めると不安が残ります。誰が、いつ、何を確認して次へ進むかを一覧にしてください。
契約書で曖昧にしない7項目
親族や知人との取引でも、契約書は関係を疑うためのものではありません。認識のずれが起きたときに、双方が同じ条件へ戻るための記録です。
- 売買の対象:土地・建物の所在、地番、家屋番号、面積、付属物を登記資料と合わせる
- 代金と支払い:売買代金、手付金、残代金、支払日、振込先、受領確認方法を決める
- 物件状態:雨漏り、腐食、給排水、シロアリ、設備、増改築、未登記部分を記録する
- 残置物と境界:家具・家電・庭木・塀・私道・越境物を、残すか撤去するか定める
- 引渡しと負担:引渡日、鍵・書類、固定資産税等の精算起算日、諸費用の負担者を決める
- 解除と融資:手付解除、債務不履行、融資が成立しない場合の扱いと期限を定める
- 契約不適合責任:対象、通知期間、対応方法、特約を物件の説明内容と一致させる
契約不適合責任を制限する特約を検討する場合も、既知の不具合を隠してよいわけではありません。免責という一語で済ませず、物件状態と対象範囲を具体的に確認します。
個人間売買で避けたい4つのリスク
判断点を先に確認します。個人間売買のリスクは、「相手を信用できるか」だけでは判断できません。契約内容、税務、登記、資金という別々の問題を、契約前に切り分けます。
- 雨漏りや未登記増築など、把握した問題を口頭説明だけで済ませる
- 親族だからという理由だけで、価格根拠を作らず大幅に安く売る
- 共有者、抵当権、境界、売買対象が曖昧なまま契約書へ署名する
- 買主の資金や融資条件が未確認のまま、決済日と引渡日を確定する
該当する場合は取引を止め、登記は司法書士、境界・未登記部分は土地家屋調査士、税務は税理士、契約条項や紛争リスクは弁護士へ確認します。取引全体の調査・説明が必要なら宅地建物取引業者の仲介も検討します。
契約不適合責任と物件状態
引き渡した土地・建物が契約内容に適合しない場合、買主から修補等の追完、代金減額、損害賠償、解除を求められることがあります。どこまで対象になるかは、契約内容と個別事情で変わります。
売主が知る不具合、修繕履歴、設備の不調、長期不在期間を写真と書面で共有し、契約書と内容を合わせます。建物状況調査は状態把握に役立ちますが、不具合がないことを保証するものではありません。
低すぎる価格と贈与税
個人から著しく低い価額で財産を取得すると、時価と対価との差額が贈与とみなされる場合があります。親族間でも同じで、買主側の贈与税が問題になる可能性があります。
個人間の低額譲渡は、単純に「時価の半額以上ならよい」とは判断できません。近隣取引や物件状態等の価格根拠を残し、契約前に税理士または税務署へ具体的な条件を伝えて確認します。
境界・権利・未登記
登記名義、共有、抵当権、差押え、土地の境界が曖昧だと、売る範囲や所有権移転を予定どおり進められません。増築部分や古い建物が未登記の空き家もあります。
司法書士は権利登記、土地家屋調査士は土地の分筆や建物表題等の表示登記を扱います。境界確定や測量が必要かも含め、売買契約より前に役割を分けて相談します。
買主の資金調達と決済
個人間売買で住宅ローンを利用できるかは、金融機関、物件、契約内容、提出資料等で異なります。「使えるはず」「個人間だから使えない」と当事者だけで決めないことが重要です。
買主は契約前に金融機関へ相談し、必要な調査・書類・審査時期を確認します。融資が成立しない場合の解除条件と期限も契約書で決め、決済不能のまま引渡しだけが進まないようにします。
自分たちで進めやすいケース・専門家を入れたいケース
個人間売買を選ぶかは、買主との関係より、物件と条件の整理度で判断します。仲介を使わない場合でも、登記や契約書確認だけを専門家へ依頼する選択肢があります。
自分たちで条件整理を進めやすいケース
- 売主名義と売買対象が一致し、共有者や抵当権等の処理方針が明確
- 境界資料と現地の状況を双方で確認できる
- 建物の不具合、残置物、修繕履歴を具体的に開示できる
- 価格根拠、買主の資金、引渡し条件を書面にできる
専門家または仲介を入れたいケース
- 相続登記、共有者、抵当権、差押え、土地と建物の名義に未解決事項がある
- 境界不明、越境、私道、農地、再建築条件等の確認が必要
- 長期放置、重大な不具合、未登記増築があり、状態説明に不安がある
- 価格差、責任範囲、融資条件について売主と買主の認識がそろわない
後者に当てはまるときは、仲介手数料の有無だけで決めず、調査・契約・登記・紛争予防に必要な支援を比べます。不明点を残したまま安さを優先しないことが判断基準です。
個人間売買で頼る専門家と依頼内容
困っている項目に合う相談先を選ぶことが最初の一歩です。登記事項証明書、固定資産関係資料、図面、写真、価格根拠、希望条件のメモをそろえると、必要な手続きと依頼範囲を具体的に話せます。
登記・境界・建物表示は司法書士と土地家屋調査士
司法書士には、所有権移転、抵当権抹消等の権利登記、本人確認、決済日に必要な書類と進行を相談します。売主と買主の必要書類は立場や登記状態で変わります。
土地家屋調査士には、境界・測量、土地の分筆、建物表題や未登記部分等の表示に関する手続きを相談します。境界紛争がある場合は、弁護士等との連携が必要になることもあります。
税務・契約・取引全体は税理士・弁護士・宅地建物取引業者
税理士には、親族間の価格、譲渡所得、贈与税、取得費等を相談します。価格を決めた後では選択肢が狭まるため、比較資料と希望価格を持って契約前に確認します。
弁護士には、契約条項、契約不適合責任、解除、当事者間の対立を相談します。宅地建物取引業者には、物件調査、条件調整、重要事項の説明を含めた仲介を依頼できます。
売買契約の前に「価格・物件・資金」をそろえて判断する
空き家の個人間売買は、買い手が決まっていれば選択肢になります。ただし、仲介を省くことと、調査・契約・登記・税務の確認を省くことは別です。
契約前に、価格の比較資料、登記と境界の資料、物件状態の一覧、買主の資金見通し、希望条件のメモを一か所へまとめます。未解決の項目には担当する専門家名を書き添えてください。
売主と買主が同じ資料を見て、同じ条件を説明できる状態になってから契約へ進みます。そこまでそろわない場合は、部分的な専門家依頼か仲介へ切り替えるのが安全な進め方です。

