空き家売却の告知書(物件状況報告書)には、売主が把握している不具合を、発生時期・場所・対応・現在の状態に分けて具体的に書きます。修繕済みでも、過去の事実まで消えるわけではありません。
最初にすることは、修繕記録、工事の領収書、現状写真、過去の売買書類を集めることです。相続や長期不在で分からない項目は、根拠なく「なし」とせず、「不明」「未確認」を分けて記載します。
自分で確認できるのは、手元の資料と安全に見られる範囲の現状です。屋根裏や床下など無理な確認は避け、必要に応じて建物状況調査を検討します。ただし、調査をしても、売主が知っている履歴の告知に置き換わるものではありません。
死亡事案や免責特約、買主から求められる対応は、事実関係と契約内容で判断が変わります。迷う記載は契約前に媒介業者の宅地建物取引士へ見せ、紛争の可能性がある場合は不動産取引に詳しい弁護士へ確認してください。
空き家売却の告知書は「事実・時期・対応」を具体的に書く
告知書は、不具合の有無だけを丸で囲んで終える書類ではありません。知っている事実は、告知書に記載して買主へ伝える。これが基本です。
書式は仲介会社や業界団体によって異なりますが、準備の順番は整理できます。次の5段階で進めると、推測と確認済みの事実を混ぜにくくなります。
- 売買書類、設計図、修繕記録、領収書、写真を集める
- 建物、設備、土地・周辺を安全に見られる範囲で確認する
- 発生時期、場所、状況、対応、現在の状態を分けて書く
- 分からない項目は「不明」「未確認」とし、確認した範囲を添える
- 告知書、付帯設備表、重要事項説明書、売買契約書を照合する

雨漏り・シロアリは発生時期と対応を分けて書く
「雨漏りあり」だけでは、買主が場所や修繕状況を判断できません。たとえば「2023年6月ごろ、2階南側の天井に雨染みを確認。2023年7月に屋根を補修し、その後は再発を確認していない」のように書きます。
正確な年月を覚えていなければ、「2023年ごろ」のように分かる範囲で記載します。工事会社、施工箇所、保証書の有無が分かる場合は、資料と対応させておくと確認しやすくなります。
修繕済みの場合も「過去に雨漏りがあり、何年ごろに修繕済み」と事実として残しておくことが大切です。「問題ない」「完全に直った」など、確認できない評価は避けます。
シロアリも同じです。被害を見つけた時期、場所、駆除・修繕の内容、その後に点検したかを分けます。薬剤名や保証期間は、手元の施工報告書で確認できる場合だけ書いてください。
分からない項目は「なし」と断定しない
相続した空き家では、売主が住んだ経験がなく、過去の修繕や事故を把握していないことがあります。その場合は、不明である事実と、どこまで確認したかを分けて残します。
たとえば「シロアリ被害は不明。2026年7月に室内から見える範囲を確認したが、床下は未確認」のように書けば、確認範囲を示せます。仲介会社の書式と助言に合わせて表現を整えてください。
- 住んだことがないのに、確認せず「なし」と記入する
- 過去の雨染みを「古い家なら普通」と自己判断して省く
- 修繕済みという理由だけで、発生した事実と工事履歴を書かない
古い書類が見つからない場合は、前所有者や親族へ確認できる範囲を検討します。ただし、近隣への聞き取りや死亡事案の調査は、プライバシーと正確性に配慮し、まず媒介業者へ相談する方が安全です。
告知書に書く前に確認したい空き家の状態
判断点を先に確認します。空き家は使われていない期間が長く、売主が現在の状態をつかみにくいことがあります。告知書を書く前に、建物、設備、土地・周辺、過去の履歴を分けて確認します。
| 確認対象 | 見る資料・場所 | 告知書に書く事実 |
|---|---|---|
| 建物本体 | 室内外・修繕記録 | 雨漏り・シロアリ・傾き・腐食 |
| 付帯設備 | 設備表・安全な動作確認 | 給排水・給湯・故障の有無 |
| 土地・周辺 | 境界資料・現地 | 境界・越境・浸水・騒音 |
| 過去の履歴 | 工事資料・旧契約書 | 増改築・火災・死亡事案 |

屋根や床下へ自分で入る必要はありません。外から安全に見える範囲と手元の資料で状態を整理し、見えない部分が契約判断に重要なら、建物状況調査を行うかを媒介業者と検討します。
調査結果があっても、過去の雨漏りや修繕歴など、売主が知っている情報は別に伝えます。現状の調査と過去の履歴は役割が違うため、どちらか一方で済ませないことが大切です。
契約不適合責任は個人売主にも関係する
契約不適合責任は、引き渡した物件の種類や品質などが、売買契約で合意した内容に適合しないときに問題となる売主の責任です。2020年4月施行の改正民法で、従来の瑕疵担保責任から契約内容を軸にした規定へ整理されました。
個人間の売買であっても、契約内容に合わない不具合があれば責任を問われる可能性があります。「相続した空き家」「築年数が古い」という事情だけで、当然に責任がなくなるわけではありません。
不適合があると、買主から修補などの追完、代金減額、損害賠償、解除を求められることがあります。ただし、それぞれの要件は同じではなく、原因や契約条項、売主・買主の事情で結論が変わります。
民法には、種類・品質の不適合を知った時から原則1年以内に買主が通知するという規定があります。一方、契約書で責任の対象や期間を別に定める場合もあるため、条文上の通知期間と契約上の責任期間を混同しないことが重要です。
告知書に事実を書けば、すべての責任が自動的になくなるわけでもありません。告知内容、契約書、引渡し時の状態がどう合意されたかを、署名・押印前に確認します。
人の死に関する告知は自然死かどうかだけで決めない
国土交通省のガイドラインは、居住用不動産の売買・賃貸で宅地建物取引業者が人の死を告げる判断基準を示しています。売買取引では、自然死と日常生活中の不慮の死は、原則として告げなくてもよいと整理されています。
ただし、自然死などでも長期間の放置に伴い特殊清掃や大規模なリフォーム等が行われた場合は、別の判断になります。買主から事案の有無を尋ねられた場合や、社会的影響の大きさから特段の事情がある場合も、判明した点を伝える必要があります。
このガイドラインは宅建業者の宅建業法上の対応を整理したもので、個別契約の民事責任を一律に決めるものではありません。「自然死だから記載しない」と売主だけで決めず、把握している事実を媒介業者へ伝えて判断を確認します。
免責特約があっても既知の事実は隠さない
個人間の空き家売買では、「現状有姿で引き渡す」「契約不適合責任を負わない」といった特約を定める場合があります。特約は、売主と買主が責任範囲を合意するための契約条件です。
しかし、民法572条では、担保責任を負わない特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実について責任を免れないと定めています。免責特約があることを理由に、既知の雨漏りやシロアリ被害を省くことはできません。
一方で、告知書に記載しただけで、責任範囲や引渡し条件が自動的に決まるわけでもありません。買主が何を知り、どの状態で引き渡すと合意したかを、告知書と契約書の両方に反映させます。
古い空き家では、建物本体、設備、配管、残置物など、対象ごとに扱いを分けることがあります。「一切免責」という短い文言だけで判断せず、対象、期間、告知済み事項、未確認事項を確認してください。
契約前に告知書・設備表・売買契約書を照合する
判断点を先に確認します。告知書を書き終えたら、契約書案が出た段階で関連書類を横に並べます。口頭で説明した内容も、書面に反映されていなければ後から確認しにくいためです。
- 告知書と付帯設備表で、不具合の有無や状態が食い違っていないか
- 重要事項説明書と売買契約書に、告知した事実が適切に反映されているか
- 現状有姿・免責の対象、責任期間、引渡しまでの修繕範囲が明確か
- 写真、工事報告書、保証書など、買主へ渡す資料が特定されているか
内容が食い違う場合は、契約当日に口頭で補うのではなく、事前に媒介業者へ修正を依頼します。法的な責任範囲や死亡事案で見解が分かれる場合は、契約書案と告知書をそろえて弁護士へ相談すると確認が具体的になります。
まとめ|空き家の状態を事実で残してから契約条件を確認する
判断点を先に確認します。空き家の告知書は、売却後の結果を保証する書類ではありません。売主が把握している事実を具体的に共有し、買主との契約内容を明確にするための重要な記録です。
修繕記録と現状写真を集め、雨漏りやシロアリは時期・場所・対応・現状に分けます。分からない項目は推測で埋めず、確認範囲を残してください。
最後に告知書、付帯設備表、重要事項説明書、売買契約書、特約を照合します。署名・押印前に不一致を直し、判断が難しい事項は資料をそろえて宅地建物取引士や弁護士へ確認することが、認識違いを減らす第一歩です。

