親族や知人から「空き家があるなら使わせてほしい」と頼まれたとき、タダで貸すつもりなら気軽に了承してしまいがちです。しかし、無償だからこそ契約内容が曖昧になり、後々深刻なトラブルに発展するケースが少なくありません。
空き家の無償貸与は、法律上「使用貸借契約」として扱われます。賃貸借契約とは異なるルールが適用されるため、正しい知識がないまま貸すと、明渡し請求ができない、原状回復費用を巡って紛争化する、相続時に親族間でもめるといった事態を招きかねません。
ここでは、空き家を無償で貸す際に必ず押さえておくべき5つの絶対ルールを解説します。
ルール1|「使用貸借契約」であることを明示する
空き家をタダで貸す場合、民法上の「使用貸借契約」に該当します。使用貸借とは、無償で物を使用・収益させ、契約終了時に返還させる契約のことです。
賃料を受け取らない代わりに、貸主の権利は賃貸借よりも強く、一定の条件下では比較的スムーズに返還を求められる仕組みになっています。ただし、実費や固定資産税相当額などを受け取ると「賃貸借契約」とみなされる可能性があり、その場合は借地借家法が適用されて明渡しのハードルが上がります。
契約書には「使用貸借契約」であることを明記し、金銭のやり取りがある場合は契約類型を慎重に判断しましょう。
ルール2|期間と終了条件を書面で決める
使用貸借契約で最も多いトラブルが「いつまで貸すのか」という点です。
期間の定めがない契約の場合、貸主が返還を求めても「使用目的が終わるまで」返さなくてよいとされる場合があります。「必要なくなったら返してね」といった口約束では、相手が「まだ必要」と主張すれば返還時期を巡って争いになりかねません。
契約書には以下を明記してください。
- 貸す期間(例:2年間、5年間など)
- 期間満了時に自動更新しない旨
- 中途解約の条件(例:3ヶ月前予告など)
- 契約終了事由(借主の転居、目的の達成、所有者の自己使用など)
親族や知人間でも、後々の証拠となるよう必ず書面を作成しましょう。
ルール3|修繕と原状回復の負担区分を明確化
無償貸与だからといって、すべての費用を借主が負担するわけではありません。一般的に、経年劣化や通常の使用による損耗は貸主負担が原則とされています。
一方、借主の故意・過失による破損や、日常的な軽微な修繕については、契約で負担区分を定めておかないと退去時に高額請求のトラブルに発展します。
契約書で以下を明示しましょう。
- 大規模修繕(屋根・外壁など)|貸主負担
- 設備の経年劣化|貸主負担
- 日常的な軽微修繕(電球交換、排水詰まりなど)|借主負担
- 故意・過失による破損|借主負担
- 退去時の清掃範囲
曖昧なまま貸すと、数十万円から数百万円の原状回復費用を巡って紛争化するリスクがあります。
ルール4|使用目的と再転貸禁止を盛り込む
「自分が住むため」という約束で貸したのに、いつの間にか第三者に又貸しされていたり、事業目的で使われていたりするケースがあります。
使用貸借契約では、使用目的を明示することで契約終了の根拠にもなります。契約書には以下を記載しましょう。
- 使用目的の明示(例:借主本人の居住用に限る)
- 再転貸・又貸しの禁止
- 同居人の追加には事前承諾が必要
- 用途変更(事業利用など)の禁止
違反した場合は契約解除できる旨も明記しておくと、抑止力になります。
ルール5|所有者責任は無償でも残ることを認識
空き家をタダで貸しても、所有者としての法的責任は消えません。
火災や建物の倒壊で近隣に被害が出た場合、管理状況や重過失の有無によっては所有者が損害賠償責任を負う可能性があります。また、空家等対策特措法により、管理不全の状態が続けば「特定空家等」に認定され、行政から指導・命令を受けるリスクもあります。
以下の対策を講じましょう。
- 火災保険の継続加入(空き家と居住物件で条件が異なる場合あり)
- 借主に個人賠償責任保険への加入を依頼
- 定期的な建物状態の確認(少なくとも年1〜2回)
- 大規模修繕費用の積立
無償だからこそ、万が一のリスクに備えた体制を整えておくことが重要です。
まとめ:親族・知人間でも書面契約を
空き家の無償貸与は、放火や不法侵入のリスクを減らせる一方、契約内容が曖昧だと深刻なトラブルを招きます。「タダだから」「親族だから」と口約束で済ませず、5つのルールに沿った書面契約を結ぶことが、双方にとって最善の予防策です。
特に相続時には、他の相続人から「不公平だ」と指摘されるケースも多く、契約書があるかどうかで争いの激しさが変わります。専門家への相談費用は数万円程度からですので、将来の紛争リスクを考えれば決して高くない投資と言えるでしょう。

