空き家を売る前に境界や越境を確認しておくと、売り出し後の価格交渉や契約条件のもめごとを減らしやすくなります。
最初に見るのは、境界標、過去の測量図や境界確認書、塀・雨樋・枝などの越境物です。売り出し前に境界標・越境物・書面を同じ順番で確認すると、専門家へ相談する内容も整理できます。
問題が見つかっても、売却自体をすぐ諦める必要はありません。ただし、分からないまま「現状のまま」で進めると、買主への説明や契約内容でつまずくことがあります。
- 境界標と書類を見て、分かる範囲を先に記録する
- 塀、雨樋、庇、枝や根などの越境物を写真で残す
- 判断できない境界は土地家屋調査士などに確認する
売却前にまず見る境界・越境のチェック順
空き家になった土地では、境界標(敷地の四隅に打ち込まれた金属プレートや杭)が紛失していたり、隣地の建物・塀・植栽が敷地に入り込んでいたりするケースが珍しくありません。
現地へ行ける場合は、建物より先に敷地の外周を一周して見ます。目視だけで判断せず、写真の日付、向き、どの隣地側かを一緒に残しておくと後で説明しやすくなります。
手元の書類では、登記事項証明書、公図、地積測量図、境界確認書、過去の売買契約書を確認します。地積測量図が必ずあるとは限らないため、ない場合は「ない」と記録します。
- 境界標が見える位置と、見当たらない角
- 塀、フェンス、庇、雨樋、室外機、枝や根の位置
- 隣地所有者と過去に交わした覚書や口頭合意の有無
- 現地写真、撮影日、どの方向から撮ったかのメモ

境界標が見つからない、古い塀が境界線上にある、隣地の枝や雨樋が越えているように見える場合は、売り出し前に不動産会社へそのまま伝えます。
「たぶん大丈夫」と処理すると、買主の現地確認や契約前の調査で話が止まることがあります。分からない箇所ほど、写真と書類をセットにして残すのが基本です。
境界が曖昧なときは測量と筆界特定を分けて考える
境界の確認には、自分で見る範囲、土地家屋調査士へ相談する範囲、法務局の制度を検討する範囲があります。すべてを同じ「測量」で片づけないことが大切です。
土地家屋調査士は、不動産の表示登記に必要な土地や建物の調査・測量を扱う専門家です。資料、現地の状況、隣接所有者の立会いなどを踏まえて境界確認を進めます。
一方、法務局の筆界特定制度は、登記上の筆界を明らかにする制度です。筆界と所有権界は別の考え方なので、土地の所有権の範囲そのものを決める手続きではありません。
費用も固定ではありません。隣地の数、道路など官民境界の有無、過去資料の状態、測量が必要かどうかで変わります。売却予定日が近いなら、早めに見積もり条件を確認します。
越境が見つかったときの3つの対処法
越境が確認されたとき、売主が取れる対処法は大きく3つです。
| 対処法 | 内容 | 向くケース |
|---|---|---|
| 撤去して売る | 越境物を是正してから売却 | 工事が軽く合意しやすい |
| 覚書を作る | 存在と将来の扱いを書面化 | すぐ撤去しにくい |
| 条件に反映する | 価格や引渡し条件で整理 | 早期売却を優先 |

建物の基礎や地中構造物など撤去が難しいものについては、隣地所有者と覚書を交わし、将来の建替え時に是正するという方針を書面で明文化してから売却するのが一般的な進め方です。
ただし、覚書だけで十分とは限りません。何がどちらの土地へ出ているのか、撤去時期、費用負担、売却後の承継を図面や写真と一緒に整理します。
隣地との話し合いが難しい、買主の希望条件が厳しい、売却時期を優先したい場合は、価格や引渡し条件へ反映する方法もあります。その場合も、買主へ説明できる資料が必要です。
現状有姿でも告知と契約内容の確認は省略できない
「古家付き土地として現状有姿で売るから、境界や越境の責任は関係ない」と思っている方は少なくありません。ここは売主が誤解しやすい部分です。
現状有姿とは「今の状態のまま引き渡す」という意味であり、それによって告知義務や契約不適合責任が消えるわけではありません。
境界や越境の存在を知っているなら、物件状況報告書や不動産会社への説明に残します。過去に隣地と話した内容、覚書の有無、写真、測量図の有無も一緒に渡します。
補足現状有姿で売る場合でも、知っている越境や境界の不明点を隠さず、契約書や説明資料にどう書くかを確認します。
説明が不足すると、後から買主との間で補修、代金減額、損害賠償、解除などが問題になることがあります。実際にどう扱うかは、契約書と事案で変わります。
そのため、本文でできる判断は「隠さず整理する」までです。個別の責任範囲や特約文言は、契約書を扱う専門家や不動産会社に確認します。
相談先は境界・契約・売却方法で分ける
境界・越境の相談先は一つにまとめない方が整理しやすくなります。何を決めたいのかで、最初に聞く相手が変わります。
| 相談先 | 主な役割 | 準備するもの |
|---|---|---|
| 土地家屋調査士 | 境界調査・測量 | 図面、写真、登記資料 |
| 弁護士・司法書士 | 覚書や契約確認 | 合意内容、契約案 |
| 不動産会社 | 売却条件の整理 | 現地写真、希望時期 |
まずは写真と書類をそろえ、境界そのものは土地家屋調査士、覚書や契約文言は法律・登記の専門家、売却条件は不動産会社へ分けて確認します。
空き家の売却先や媒介契約を選ぶ段階では、境界や越境の事情を最初から伝えられる会社かどうかも大切です。
境界・越境は売る前に記録して契約へ反映する
空き家の境界・越境問題は、売り出してから気づくほど交渉が難しくなります。最初に見るべきものは、境界標、書類、越境物、写真記録です。
問題がある場合は、撤去できるか、覚書で承継するか、売却条件に反映するかを分けて考えます。判断できない境界は、自己判断で決めずに専門家へ確認します。
売主にできる一番の準備は、分かっている事実を隠さず、物件状況報告書や契約内容へ反映できる形に整えることです。それが売却後のトラブルを減らす土台になります。

